大地に蘇る生命

Glacier
Last Ice Age 最後の氷河期

一万年以上前、北米大陸の大部分は分厚い氷床で覆われていたという。南東アラスカに位置するグレーシャーベイ国立公園では、現在も氷河が存在し、後退と前進を繰り返している。

2001年6月撮影。
数千年にも及ぶ長い時間をかけて、再び水に帰ってゆく氷河。やがて水は海に流れこみ、雲を形成し、再び沿岸部の山脈に雪を降らす。降り積もった雪は、やがて長い年月を経て、氷河となる。
2001年7月撮影。
氷河が後退して出現した新生の大地と入り江。

氷河は、長い年月をかけて大地を削り取りながら山の斜面を下ってゆく。やがて、氷河の末端から崩れ、海に消えてゆく。氷河が後退して出現した大地に再び生命が宿り、いつの日かこの場所にも、生命で満ち溢れた森が出現するのであろうか。

2001年6月撮影。
生命の誕生。

氷河とルピナス。氷河の後退とともに出現した大地には、栄養分が極端に乏しい。このやせた大地に、パイオニア植物と呼ばれる苔や高山植物などが生まれ、やせた大地に窒素などの栄養分を供給する。やがて、パイオニア植物はそれ自身の役割を終え、ハンノキやハコヤナギなどの落葉樹にその場所を明け渡してゆく。そして、その落葉樹もまた、自ら葉を落とし、大地に栄養を供給してトウヒなどの針葉樹にその場所を明け渡す。森の出現。

2001年7月撮影。
大地に蘇る生命

氷河から吹き降ろす冷たい風に耐え、栄養分が極端に乏しい、瓦礫ばかりの無機質な大地に咲く、高山植物の花。その懸命な姿は、昆虫たちを呼び寄せるためか。

2001年7月撮影。
氷河の後退時に、置き去りにされた巨石。

氷河が後退してから200年余りを経て、シトカ・トウヒの若い森が出現した。現在、隆盛を誇るトウヒの森も、自ら落としてゆく葉によって、土壌を酸性に変え、トウヒ自身に適さない環境をつくりあげてしまう。このトウヒの森に代って、酸性の土壌に強いツガがこの森に台頭し、森に多様性をもたらす。

1997年7月撮影。
森が出現し、森に多様性がうまれると共に、様々な生命が若い森に戻ってくる。数万年前に隆盛を誇った太古の森は、氷河時代の到来と共に、氷床の下に飲みこまれていった。時は移ろい大地は温められ、氷河は消え去り、数万年の時を超えて、再び森が出現した。

2001年7月撮影。

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