霧に煙る森
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長く降り続いた雨もようやくあがった。
「森の精霊たちが食事のために火を焚いている。」
この辺り一帯のフィヨルドの海と森に暮らしてきた先住民クリンギットの人々は、雨上がりにたちこめる霧をこう表現した。
彼らは海に面した森に集落を構え、豊かな海と沿岸部の森で狩猟採集の生活を営んできた。
彼らは、森の奥深くには入らなかった。
海に出れば、サケやニシン、オヒョウ、貝類といった海の幸はふんだんに採ることができたし、森に一歩入れば、イチゴなどが沢山、採れた。シカだって森に入ればすぐに獲れたのだ。
森の奥は「森の精霊」の住みかであり、めったに人々は森の奥深くへと足を踏み入れることはなかった。
南東アラスカ、サックスマン村