太古の記憶 


繋がり紡ぎあう生命  Pacific Northwest Coast ALASKA , CANADA



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北米北西海岸(Pacific North West Coast)。南東アラスカからカナダBC州沿岸部、そしてワシントン州の沿岸部にかけて、Temperate Rainforestと呼ばれる温帯性湿潤の原生森林が広がっている。北太平洋沖を流れる黒潮(Japan Current)は、北米北西海岸一帯に膨大な降水量をもたらす。その量は年間5000ミリをこえ、南東アラスカの背後に連なるフェアウェザー山脈や、カナダBC州沿岸部のコースト山脈、ワシントン州沿岸部に突き出たオリンピック半島の山々に氷河を形成し、その麓には巨樹が立ち並ぶ壮大な森を生み出した




海流によって持ち上げられ、海底部のプランクトンなどの栄養分に富んだ海水は、ニシンやサケなどの魚類を育て、それを捕食するクジラやアザラシ、トドといった海洋哺乳動物を育て、無数の鳥類を育てる。



氷河が後退して出現した新生の大地には、急速に生命が蘇り、ゆっくりと森が形成され、いつしか樹齢2000年をこえる巨樹が生い茂る、太古の森が生まれた。



森の木立を流れる沢は、豊饒な海の恵みに支えられて育った無数のサケで溢れ、その膨大なサケによって、森の動物たちの命は支えられている。



最後の氷河期が終わる一万年以上前から、北米北西海岸一帯にはモンゴロイド(アメリカ先住民の祖先)が暮らしてきた。彼らは氷河が後退して生まれた沿岸部の森や川に沿って集落を造っていった。彼らは、あらゆるすべての生命、雨や風などの自然現象にさえスピリット(精霊)が宿り、森羅万象にはすべて意思があると信じてきた。そして、沿岸部の森と海の恵みに支えられて生きてきた。北米北西海岸に暮らしてきた人々は、総じて狩猟採集の生活を営み、自然の中で編み出された様々な叡智は、子孫へと受け継がれていった。そして、彼らの遠い祖先と精霊たちの物語をトーテムポールに刻み込んだ。


朽ち果て、ゆっくりと森へ帰る、ハイダ族
のトーテムポール



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